雪割草
 夜になりーー青白い顔をしたシローが帰って来ると、その足音で美枝子も目を覚ました。

「どうしたの?シローちゃん、顔色悪いわよ」

 目を擦りながら、心配そうに声を掛けた。

何も言わずシローは入口で靴を脱ぎ捨て、そのまま座り込んでしまった。

「美枝子ごめん!」

 その台詞を腹底から吐き出したかとおもうと、シローはいきなり土下座をして頭を床にこすりつけた。

「どうしたの?」

 理由を訊く美枝子に、暫く口を噤むシローだった。

「一体、何があったの?」

 美枝子は毛布を押しのけシローに近づいた。

薄暗い部屋の中で、二人の姿は切り取られた影絵のようであった。

「ごめん、実は……。」

 涙混じりに重い口を開き、今までの経緯を話し始めた。

 シローは一攫千金を狙い、全財産をギャンブルで摺ってしまったらしかった……。

「美枝子、ごめん。俺達はアパートに引っ越せなくなっちまった」

 頭を下げ続け、手の甲に涙を落とした。

時が止まっているように感じた。

いや、時間が戻ってさえくれれば……。

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