雪割草
 自分の愚かさと、美枝子への罪悪感で顔を上げる事が出来ず、シローは泣き崩れていた。


 話しを全て聞き終え、一呼吸置いてから、

「大丈夫よ。なんとかなるわ」

 そう言って、今度は美枝子がシローの頭をそっと撫でてあげた。

 苦々しい嗚咽を伴い、涙が止らず顔を伏せたシローの背中を、美枝子は何時までもさすってあげていた。

「大丈夫よ。シローちゃん……。」

遠のいてゆく意識の中、何度もその言葉が聞こえてきた。
子守歌のように心に染み込んでいった……。


 必ず時は刻まれ、そして新しい景色を塗り替えてゆく。

いつの間にか朝を迎えていた。

シローは自分がいつ頃眠ってしまったのかさえも分からないでいた。

それでも、昨日の自分の愚かな行動を思い起こすと、急に胃の辺りが強張ってくるのを覚えた。

シローは両手で自分の下腹部を押さえながら、ふと部屋の周りを見渡すとーー。


美枝子が居なくなっている事に気がついた……。

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