雪割草
  憔悴しきった心と体は力を失い、シローは跪きながらブルーシートに頬摺りをした。

「ごめん……。美枝子……。」

 シートの上からきつく美枝子を抱きしめていた。

残された時間を、できるだけ長く傍に居てあげたかった……。


すると、

「なにブツブツ、独り言いってんの?おじさん!

本当に、その人を殺したの?」

 さっきの少女が、すぐ後ろに立っていた。

 驚いたシローは、後退りをしながら顔を見上げた。

 彼女を照らす街灯の灯りは、電球が切れてしまいそうなのか、点いたり消えたりと不機嫌さを醸し出していた。

「ほら、おじさん!答えなよ!」

 そう言いながら、少女は歩み寄ってきた。

「あぁ、俺の不注意で死なせてしまったんだ……。」

 後退りを続け、小さな声で答えた。

「ふ~ん」

 彼女はまだ、納得していないようだった。

「その人は、あんたの知り合い?

どうして、リヤカーで運んでるの?」

 更に問い詰めてきた。

「…………。」

 シローは黙っていた。

こんな小娘に何かを訴えかけても仕方がない。

そう思っていた。

「あんた、ホントに警察呼ぶよ!」

 痺れを切らした少女は、おもむろに携帯電話を取り出した。

「あっ、あぁ……。」

 シローは彼女に従うしか、なくなってしまった。

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