月夜の物語


まだ誰も働き始めていない城内。

しかし城内の鍵番の者が、夜明け直前、皆が起き出すよりも少し前の時間に部屋の解錠を行うことを新は知っていた。

鍵を扱っているのは、武将に信頼され雇われているその鍵番だけなのだから、彼はきっと姫の部屋の鍵も開けるのだろうと新は考えたのだ。





城内へこっそりと入り込み、前方に鍵番のそろそろと歩く姿を捉える。

その後ろを、なるべく気配を消してついていった。



上階。一番奥の部屋。

やはり鍵番は、姫の部屋の施錠も行った。全ての部屋の解錠をした一番最後に。



鍵番がいなくなったのを見計らう。

新に、躊躇いなどなかった。



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