月夜の物語
「姫様…っ!」
紫と橙の混ざった光が、窓から射し込む部屋。
新が勢いよくふすまを開けた時、姫は窓際に座ってぼんやりと外を眺めていた。
こんな時間に目を覚ましていたことに驚きながら、もしかしたら姫は一晩中寝ていなかったのではないだろうか、と勘繰る。
「…貴方は!どうしてここにっ、」
「姫様、時間がありません。私について来られてください」
「なに!?何なのッ、いや…、嫌だ!離して!」
「…静かに。あんまり大きな声出すと、ちょっと手荒いことしちゃうよ、俺。いいの?」
―― 新は、姫を奪いに来たのだ。
自分の人生を悲観して、寂しく独りで泣いている。それも、毎日。
そんな姫のことを知ってしまった以上、放っておくことができなかった。
連れ出して、一緒に遠くへ逃げようと考えた。
短絡的で、でも人情に篤い新には、姫を救う手段はそれしか思いつかなかったのだ。