月夜の物語
新は一度姫を家まで運び、立派な着物から薄い肌着に着換えさせた。
「このほうが動きやすいでしょう」
「…………」
姫は一言も口を開かない。
ただずっと、涙を浮かべて俯いていた。
「…姫。ここに居ては危ないので、もう出ましょう」
「…………」
しかし手を引く新から逃げ出さないのは、新が何か悪だくみを考えているようにも見えなかったから。
ただ純粋に、自分を救いたいと思ってくれているのだろうと、ぼんやりだが感じたのだ。
「…貴方、私を殺すの?」
「は?そんなわけないでしょう」
「…………」
「俺はただ心から、貴女を助けたいと思ったんです」
新は微笑む。その表情に嘘がないことは、人づきあいをしたことのない姫にもわかった。
ついていくのは、怖い。
だけどあの籠の中に閉じ込められるのも、もう嫌だった。