月夜の物語
町の中は移動しやすかった。姫の顔を誰も見たことがないからだ。
新は姫の手を引いて、彼女のペースに合わせて進んだ。
姫ももう、拒まずに新についていく。ただ、迷いはまだ感じられる様子だった。
「姫。申し訳ありません、勝手な真似を…」
「…いまさら、」
「俺、無計画っていうか…思い立ったらすぐ行動しちゃうんです。後先考えず」
新の言葉に、姫の不安は煽られる。
やはりこんな男に、黙ってついて行かないほうがいいのではないだろうか。
「でも姫のことは、2日寝ずに考えたんです」
「………、」
「貴女を、救いたくて。…本気です」
この男と一緒に、先に進むしかないと、姫は思った。
だってもう、全く知らない場所まで来てしまったのだから。城も豆粒ほどの大きさにしか見えなくなった。
戻ろうにもひとりでは戻れないだろう。
「大丈夫。俺を信じて」
新はしきりに「俺を信じて」と姫に声をかけた。