月夜の物語
走るのをやめて3時間ほど歩いたところで、姫が立ち止った。
人里離れた森の中。新はそろそろ身を隠す場所を探さなければならないと考えていた。
「足が…、」
見ると、慣れない履物を履いた足からは血が滲んでいる。
城の中では全くと言っていいほど動かなかった姫の足腰は弱く、体力もない。
陽は、完全に昇りきった。
「姫、さぁ、乗ってください」
「……え、」
新が姫の前に背を向けてひざまずく。
「俺の背中に。ほら」
「でも、」
「いいから。おいで」
馴れ馴れしい新の態度にも、もうだいぶ慣れた姫。
姫は新の肩にそっと手をかけ、彼の背に体を預けた。