月夜の物語


そのころ城は大変な騒ぎになっていた。

姫が居なくなったことに気付いた乳母が父にその旨を伝えると、彼は憤慨した。



籠の中でずっと大切に大切に育ててきた娘。

自分のいい時に、遣おうと思っていた娘。

その娘が、行方不明なのだ。



そのうち、男が姫らしき女性をさらっていくのを見たという証言が飛び交い始めた。

早朝勤務の者が、新と姫を目撃していたのだ。

姫が自らの意思で逃げ出したのではないと知り、父はさらに怒りをあらわにした。



彼はすぐに、城中の者を集めた。

位の高い者から、低い護衛の者まで。その中には悠馬もいた。



悠馬にはすぐにわかった。

姫を連れ出したのは、新なのだと。



「姫を連れ出した者を確実に捕らえるのだ!姫には体力がない。さほど遠くへは行っていないはずだ。男は、発見し次第、殺してしまっても構わない!いや、殺せ!必ず殺せ!」




悠馬はぎゅっと拳を握りしめた。


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