月夜の物語
「姫。ただいま戻りました」
山小屋に戻ると、姫は小屋の外に出てぼんやりと空を眺めていた。
晴天に流れゆく雲。遥か上空を飛ぶ鳥。頬を風がかすめた。
「新さん。空とは、こんなにも広いのですね」
「ええ。そうです」
「鳥とは本来、こんなに自由なのですね」
「そうですよ」
姫は空に向かって指をさし出し、飛んでいく鳥を追った。
彼女は部屋で飼っていた鳥と自分は同じだと思っていた。
自分は大切に飼われている鳥なのだと。
鳥には自由が無い。鳥は空を飛べない。可哀相だ。
そう思っていた。
しかし一旦外へ出ると、鳥は大空を飛び自由に鳴いていた。
「あの子も、一緒に連れ出してあげたかった」
「あの子?」
「城で飼っていた、鳥」
姫は新に向かってふわりとほほ笑む。
新はその表情に心を打たれて、ますます姫への想いを強くした。
絶対に、姫を自分が守ると心に決めたのだ。