月夜の物語
ふたりきりの生活は、万事が順調だった。
愛し合うようになったふたりは、何度となく体を重ねて気持ちを繋いだ。
海月は新を心から信頼し、愛していたし
新の海月への気持ちはすでに、愛を超越していた。
愛してるなんて言葉では、自分の海月への気持ちを表せない。
だけど新は、愛してる以上の愛の言葉を知らなかった。
だから何度も何度も愛していると繰り返し、海月へ有り余る愛を注いだ。
しかし、ある日を境に海月の具合が悪くなり始めた。
毎日起き上がることもできない程にぐったりとして、新はおちおち町へ行ってもいられなくなった。
「海月…せめて山菜だけでも食べて」
「いりません…」
「でも、こんなんじゃ…」
死んでしまうぞ。
そう言いそうになって、慌てて口をつぐむ。
そんな縁起でもない言葉、口にも出したくなかった。
「町の医者に行くか?」
「…行かない」
明日は町に出て人に話を聞いて、薬を持って帰ろうと決意して、新は眠ることもせずに姫の背中を一晩中さすり続けた。