月夜の物語
「それは子が出来たのでしょう」
驚くほどあっさりと、町の医者は答えた。
海月の症状を少し話しただけで。
新はこの医者は藪医者ではないかと疑った。
「悪い病気だという可能性は…?」
「無きにしも非ず」
「やはり一度診せに来たほうがいいですか?」
「あんたの話を聞いている限りでは、悪病だとは思えん。あと90日程様子をみても、具合の悪さが治まらなければ来なさい」
90日?
そんな悠長に構えていて本当に大丈夫なのか…。
下手すれば死んでしまう。
だが、医者は自分よりはるかに頭が良い。
新は素直に従って、医者に言われた体調回復に効くとされる果物などを持って帰った。
「海月。今日行って来たよ、医者に」
「…ありがとう」
「身重じゃないか、って」
新の言葉に、海月は目を丸くした。
そして少し考えてから、そうなのかしらとだけ発した。
「もしそうなら、あと90日くらい待てば具合の悪いのも良くなるらしい」
「…そう」
「とりあえず様子を見よう。本当に辛くて死にそうなら、俺がすぐに医者へ連れて行くから言ってくれ」
「ええ、わかったわ」
海月は、新の言葉に少しだけホッとした。
悪い病気にかかったのではないかと、気を病んでいたからだ。
病は気からというが、新の言葉を聞いた海月は気力を取り戻し
次の日からは、床から起き上がれるまでになっていた。