月夜の物語
医者の言うとおり、90日もすれば海月の体調は回復した。
代わりに少しずつお腹が張り始め、海月は自分の妊娠を確信した。
「子どもが生まれる前にもう少し遠くへ行って、ちゃんとした家へ住もう」
「ええ。それがいいわ」
「出産はきちんと産婆についてもらわないと、心配だし」
自分には何も出来ないことがわかっている新には、それくらいしかしてやれることがなかった。
新はそのうち、町へ出て仕事をするようになった。
海月と産まれ来る子供のために。
いつものように、新が出かけた日の午後。
ずいぶん大きくなったお腹をさすり、体を新が作ったイスに預けて、海月は今日も空の鳥を目で追っていた。
産まれてくる子供には、なるべく自由をさせてやりたい。
自分のようにはならないでほしい。
新と一緒に、愛情をたくさん注いで育てようと思いながら。
――ガサリ。
草を踏む音がして、びくりと海月が反応する。
もう新が帰って来たのだろうか。
イスから立ち上がり小屋の外へ出てみる。
するとそこに、見知らぬ男が背中に弓矢を刺して立ち尽くしていた。