月夜の物語
「誰っ、誰なの!?」
「あまり大きな声を出されないでください」
小屋の中で、男は手のひらをはずしたが
彼女が逃げ出さないように手首はがっちりと拘束したままだった。
海月は抵抗を止め、ただただ大粒の涙を流した。
きっと自分はこのままこの男に殺されると、本能的に気付いた。
男は海月の体を見て、次に部屋の中を見回した。
「姫様は、身重なのですね」
「………」
「ここには、新という男と一緒に住んでいるのですか」
「………」
これが城の者だということは、すぐにわかった。
海月は、新の名前を呼んでしまったことを酷く後悔していた。
どうすれば、助かることが出来るのだろうか。
どうしてこんな場所が知られてしまったのだろうか。
「姫様ご安心ください。私は姫様にも新にも絶対に手出しはしない」
「……」
嘘をついて、自分を安心させるつもりだとわかって、苛立ちを覚える。
海月はそれを唇を噛み締めて堪えた。