月夜の物語
「申し遅れましたが、私は新の親友の木瀬と申す者です。木瀬悠馬」
「悠馬、」
「もしかして、私をご存知ですか…?」
男は、あの悠馬だった。
海月は悠馬のことを知っていた。知っていたと言っても、新に話を聞いていただけなのだが。
新は海月に、悠馬のことをいつも懐かしそうに話して聞かせていたのだ。
「新に…、聞いています」
「そうですか。私は貴女方を助けに参ったのです」
「…助け?」
「はい。城では将軍様が憤慨なされて、二人を探すように城中の者に命令しました。姫様を必ず連れて帰ること。そして新はその場で殺せと」
「……っ!」
悠馬の発した残酷な言葉に、海月は言葉が出なくなる。
また涙が溢れ出した。そんな海月をなだめながら、悠馬は続けた。
「こんなに長い間行方がわからないにも関わらず、将軍様は懸賞金まで懸けて捜索を続行することを命じています。今でも城の者はあちこちに散らばって姫様と新を血眼で捜している」
「そんな…」
「私は誰より先に二人を見つけて、助けようと決意しました。絶対に誰にも親友に手出しはさせない。直感で、この山に入りました。そしてここを見つけたのです」
「そうでしたか…」
「ご無事でよかった。それに貴女様はとても幸せそうだ。新は元気ですか?」
悠馬は凛々しい顔を崩さずに海月に問う。
彼女は小さく頷いた。
この人はきっと、信頼できる。
信頼している新の親友なのだから。