月夜の物語
悠馬は新を抱えて小屋へ運んだ。
服を剥がすと、腹部と胸部を3ヶ所も傷つけられていた。
弓矢で撃たれたのだと思う。それも近距離から。
そう思うと、自分の背負っている弓矢が憎らしくて仕方なくなり、それを床に叩きつけた。
傷口を縛り止血する。
すると新は少し楽になったようで、呼吸をゆっくりと整えた。
「町に、守衛の、仲間がいた…」
「そいつにやられたのか」
「逃げたんだ……、でも、うたれた」
命を狙ったのは、仲間だったなんて。
悠馬は悔しくて拳を真っ白になるほど握りしめた。
「悠馬…来て、くれて、あり、がと…」
「もういい。もう喋るな新。明日の夜明け前に、ここを出よう。お前のことは俺が抱えて行く。姫もきちんと連れて行く。だから心配するな。宛てはある」
「ありがとう…」
「今はゆっくり休め」
新は頷く。
しかし目を閉じることなく、隣に座る海月に手を伸ばし引き寄せた。
海月は新に抱きついた。そして傷口を何度も撫でながら、頬にキスをする。
「新…大丈夫だからね」
「おう…。海月と、子ども、残して…死なれねぇよ……」
このふたりが心から愛し合っていることを知り、悠馬の胸は熱くなる。
絶対に絶対に、新を助けたいと思った。
3人で逃げるのだ、と。