月夜の物語
「そうだ…悠馬、それ、取ってくれ」
新は思い出したように、町へ持っていった袋を指さす。
悠馬がそれを渡すと、新はそれをゆっくりと開けた。
「これ…。普段あんまり、いいもの、食わせてやれてないから…。子供も、腹が空くだろうし…、海月に、食べさせたくて」
新はおぼつかない手つきで、袋から数種類の肉を取り出した。
それに果物。最後に穀物。
「買ってて、やられた…」
情けねぇと笑った新に、堪え切れず悠馬が涙を流す。
こんなに誰かを思いやることのできる新が、命をかけて誰かを守ることのできた新が、どうしてこんな目に遭わなければならないのか。
悔しい。どうしても、悔しい。
「あとね、海月…手、出して」
「え…?」
新は海月の手を取った。そして、袋の底から手のひらに収まるくらいの何かを取り出して、海月の手の上に置く。
「これは…」
「お守り…。元気な子が、産まれますように…」
新が手渡したのは、漆塗りのくしだった。
漆黒に満月が描かれた、綺麗なくし。
新はくしと一緒に、強く海月の手を握った。
「海月…」
「はい…」
「愛してる」
新の瞳から一筋涙が流れる。
そのまま新は目を閉じて、眠りについた。