月夜の物語
夜明け前。
外が薄明るくなってきたころ、悠馬が海月を起こした。
「姫。そろそろ行きましょう。荷物は持てますか?」
「…ええ。新を起こさなきゃ」
静かに眠っている新に、海月が手をかける。
その瞬間に、彼女の顔色が変わった。真っ青に。
「…新?」
「姫?どうされました」
「新が…」
海月の全身が、がくがくと震え始める。
そのまま意識を失うように、彼女はその場に座り込んでしまった。
慌てて悠馬が体を支える。
そして、新の体にそっと触れた。
その体は、氷のように冷たくなっていた。
今、自分が踏んでいる床の土と同じ冷たさに。
新は既に、息をしていなかった。
海月にくしを渡して微笑んだ顔のまま、眠るように目を閉じて。