澤木さんのこと。

ため息をつきながら言うと


「ずっとお前の中にいて離れなかったもんな」

澤木さんも寂しそうに呟く。


「はい。あたしも連れて帰りたかったなぁ~」

「お前に犬の世話なんか出来ンのかよ」

「失礼なあたしと澤木さんならきっと」

「ちょっと待て、何で俺まで入ってンだよ」

「へ?あたしと澤木さんが一緒にお世話するんですよ?」

「勝手に一緒にすんな」


あたしにじろっと睨んでからまた前を向いて歩きだす。

あたしはよく知ってる。

澤木さんのそのにらみは全く怖くもないし。

むしろもっと見つめていたいってそう思う。


「でも・・飼い主が見つからなかったらそういうのもよかったかもな」

「はい?」

「いや、別に」

「何ですか?ちゃんと言って下さいよ」

「前から思ってたけど、お前って結構しつこいのな」

「そうですよ?やっと気づいたんですか?」

「まぁな」

澤木さんはそう言うとぽんぽんとあたしの頭を撫でた。

「ね、澤木さん?」

「ん?」


その服、ずっと

女の人の匂い、ついてますよ。

そんな言葉を発したら、澤木さんはどんな顔するのかな?

少しでも弁解してくれる?

それとも、すんなり答えてくれる?

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