澤木さんのこと。
「ただいま」
澤木さんと別れて着いた先は自分の家。
深呼吸をしてドアを開ける。
築30年は経ってる2DKの古い部屋。
畳が二部屋。古いガス代に狭いキッチン。
そのキッチンの前のテーブルに向かって化粧をしてる人が
「げ、帰って来たの?」
本当に会いたくなかったのか、ものすごく顔をしかめられる。
ずきんと刺す痛い傷は
もう小さい頃からいくつも出来てる。
いくら治療したくても治らない、心の傷。
「ごめんなさい」
「あたしが出ていくまで帰って来るなっていったじゃん。
あーもうアイラインずれたし」
「ごめんなさい」
「いちいち謝んなよ。マジうざい」
「ごめ」
再びそれを口にしたとき
「だからやめろってば!!」
怒鳴り声と一緒にものが飛んできた。