【短編】狼彼女とチョコレート
「…照れてるんだ?」
「ち、ちがっ…」
指についたチョコレートをペロッと舐める。
…会長、顔真っ赤。
キスの方がよっぽど恥ずかしいと思うんだけど。
──…
その時、短いバイブの音が教室に響いた。
あたしのじゃない、ってことは会長の携帯の着信。
会長はあたしをチラッと見てから、携帯を開いた。
しばらくメールに目を落とすと、パタンと携帯を閉じて立ち上がった。
「…ちょっと行ってくる。」
「どこ行くの?」
「柴原が用があるって。」
「ふーん…」
あの子、か。
いつも会長の側にいるあの子。
「…待って。あたしも行く。」
あたしが会長の腕を掴むと、少し面倒くさそうに振り向いた。
それでも腕を振り払ったりはしなくて、そのままぼそっと勝手にしろ、なんて言ってくれる会長。
あたしは嬉しくなって、会長の手を握った。