【短編】狼彼女とチョコレート
会長はどうやら一年の教室に向かっているみたい。
教室が近くなってきて、あたしは手を離した。
その途端、振り向いた会長と目が合う。
「なに?」
「…いや、別に。」
「手。離したくなかったの?」
「ば…馬鹿か…!」
思いっきり否定する会長。
でも、その頬は誤魔化せないぐらいに染まっていた。
そんな会長を見ると、愛しい気持ちでいっぱいになる。
胸がきゅっと苦しくなって…
このまま会長を抱きしめたくなる。
そんな気持ち。
会長は知らないんだろうけど。
「…あ、柴原。」
会長が教室に入ると、ガタッと立ち上がる音がした。
あたしはそのまま会長から離れて、廊下を歩く。
なんだか、悪い気がした。
きっと、あの子はこれから会長にチョコレートを渡す。
そしてきっと…
会長は受け取る。
あたしにはその場で平然としていられる自信がない。