【短編】狼彼女とチョコレート
「……何やってんの?会長」
あたしがそう聞くと、会長は罰が悪そうに、角から出てきた。
「用事、もう終わったの?」
「あぁ。それより……」
そう言って俯いた会長は、ひどく不機嫌そうな顔をしていた。
でも言葉の先を続けようとしない。
あたしは会長の手をとる。
「…帰ろ?」
そう言っても会長は動かない。
何なのよ、もう…
意味が分からない会長の行動にあたしは苛立つ。
「か…っ」
あたしが会長と呼ぶ前に、会長の力強い腕があたしを抱き締めていた。
とても心地よい会長の腕。
少し速くなった鼓動が聞こえる。
「…食べるのか?」
「何よそれ…」
やっと口を開いたけれど、意味の分からない会長の言葉に戸惑う。
「あの男からもらった……チョコレートでも食べるのか?」
……あぁ。
そういうことか。
ちょっと不可解だった会長の行動の意味がやっと分かった。