School
「手…振り払わないのか?」

滲んだ景色に、ぼんやりと見える。

ニヤリと笑っている先生。

「振りっ…払えないよ…」

「アザ…どうした?」

「………」

「言えない事もあるよな…」

ポンと頭を撫でてくれる

父親とは正反対の優しい手。

「先生の手…優しい、ね」

「薬品の匂いがするだろ?」

また、涙を拭ってくれた。

気づかなかったけど、

何かの匂いが一瞬した。

「そうか…誰かに殴られたんだな」

「違うよ…階段から落ちただけ」

「どんくさい」とか

「そそっかしい」とか

そんな言葉が返ってくると思った。

「中坊みたいな事言うな、お前。腹とか他は…大丈夫か?」

心配してくれてるの?

余計に涙が溢れる。

「泣くな…不細工だ」

そう言いながらも

涙を拭ってくれる優しい手。

「せっ…せぇ…先せぃ」

「彼氏からでもDVだ。
保健医の岩松先生に聞いてもらうのが一番…」

フルフルと首を左右に振る。

「佐伯…親か?」

否定も肯定もできずにいた。

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