School

会話と私

風は相変わらず柔らかい。

黙ったままで私は口を開かなかった。

「佐伯、話せば聞く。俺でよければな…」

優しい手で頭を撫でてくれる。

何故か信頼できる先生。

「父親だよ…これ」

「家庭内暴力…か」

一つ一つ噛み締めて先生に伝える。

人には絶対に知られたくないこと。

父親がアルコール中毒だと思う事。

暴力をふるって母親は逃げてる事。

私にも暴力をふるってくること。

顔には手を出さないこと。

金づるになると言っては、私を売ろうとしている事。

「暴力ふるわれたら言ってやれ…
私みたいなガキが欲しい奴はいないってな」

「先生…」

「嘘。何かあれば電話しろ」

紙っ切れに書かれた電話番号。

「飛んでってやるから」

イタズラっぽく微笑んでいた。

髪をぐしゃぐしゃと撫でると屋上を後にした。

先生…

また助けてくれたんだ。

どうして…

私にいっぱい「優しい」をくれるの?

戸を開けると楓が座って待っていた。

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