Contrast
 私は慌てふためいた状態でぴたりと停止し、ぱちぱちと瞬きを数回した。その様子がよほどおかしかったのか、男子生徒はくすりと笑って真正面の小さな横長の長方形の窓を指差した。


「なんか暑くない?」


 なんとか事態は飲み込めた。気がする。彼は暑いと感じているらしく、窓を開けて涼みたいようだ。ただそれだけだ。


 私はまったく暑くないが、勝手に入ってしまって怒られるよりも、言うことを聞いて無傷で帰れるほうがいいに決まっている。


 私は素早く窓の前に立ち、鍵を開け、横にスライドさせたが、


「あ、あれ?」


 がこん、がこん


 どうやら何かにつっかえてしまっているようだ。横に動かしても1ミリたりとも開かない。


「え?開かないの?」


 その声に私は振り返り、真後ろにいた彼とばっちりと視線が交わった。


 立ち上がった男子生徒は私より頭一つ分背が高い。茶色がかった髪の毛に開いた瞳は深い黒。その凛とした眼差しを受け止めれる訳も無く、私は俯いてこくこくと頷いた。
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