キスしたくなる唇に。
…まあ高校に上がる頃にはお母さんも立ちなおってくれたし、
元ヤンだった千穂にも会ったし。
昔に比べたら明るいよね。
あたしは、変われたよね。
「…ねぇ、わざと寝てんの?」
「…先輩、」
軽く吹き渡る風の中で、あたしは瞼を閉じたまま、隣に先輩の気配を感じた。
背中には、切なく伝わる冷たいコンクリートの壁。
あたしが静かに名を呼ぶと、先輩は少し間をおいてから『なぁに?』と聞いてくる。