新撰組の姫君 〜もしもの世界・斎藤一編〜
私を抱き抱えたまま局長室に走る一君。

「…斎藤です。失礼してもよろしいでしょうか?」

「うむ。どうぞ。」

「…失礼します。」

素早いやりとりで局長室に入る一君。

「…局長。総司が飛んでます。」

「えっ?空?」

一君がいろいろ略しすぎたせいで通じていない。

「総くんの様子がおかしいんです。道場に居るんですけど。」

「あぁ。そういう事か。」

そう言って立ち上がる近藤さん。

これだけで通じるということは…

何回か同じことがあったと見える。

走る一君と近藤さん。

というか、2人とも早い。

「総司!落ち着きなさい!」

死屍の中心に佇む総くんに向かって叫ぶ近藤さん。

「近藤さん。だめですよ。こいつら腐ってます。」

そう言ってどこか悲しそうな顔をする総くん。

よく見れば、隊長さんたちはいないし、土方さんもいない。

死屍と化している隊士たちもごく一部のようで先程に比べると人数が少ない気がする。

「何があったんだ?」

「長くなりますよ。」

「そうか。では局長室にでも移動をしよう。悪いが斉藤君たちには片付けを任せてもいいかな?」

「…御意。」

「他の隊長たちも呼んで片付けておいてくれ。」

そう言って近藤さんは総くんを連れて局長室にもどっていった。

「…呼びに行くが、もし起きて逃げるとまずい。此処で見張っていてくれないか?」

「了解。行ってらっしゃい。」



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