新撰組の姫君 〜もしもの世界・斎藤一編〜
ガッシリと隊士たちの首根っこを掴んでズルズルと運ぶ一君。

「…蔵にでもおいてくる。」

そう言って道場を出て行ってしまった。。

道場内を見回す。

点々と散る赤い水。

ズルズルと引きずられた隊士のせいで伸びている赤い水。

木の破片…もとは木刀だろうか?

壁に開く穴。

これを一体どうするのだろう…?

私も動かなければいけないけど…

雑巾もない上にまず動けない。

「お~お~。ひどい惨状やなぁ。」

見たことない人がやって来る。

「…?」

チラリとこちらを見てニッコリと笑ったその人は元気いっぱいに自己紹介をしてくれた。

「俺は山崎丞ってもんや。よろしゅうな!」

「あ、私は「十六夜奏やろ?3番隊の十六夜君の妹さんのぉ」

「…よく知ってらっしゃいますね。」

自己紹介をする前に名前が知られているなんて…

「新撰組の中でも特殊な仕事やからなぁ。まぁ、職業病ってやっちゃ。」

「…間者?」

「それ仕事ちゃうやろ?」

「怪しかったので。」

まだ幹部の皆さんの前でしか話をしていなかったのに知っているなんて怪しすぎる。

「失礼してまうわ。俺は監察方や。まだしっかりしてないけどな。」

「監察方…ですか。」

なるほど。それならば知っていてもおかしくはないのかな…?


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