同居の秘密。【完】


どうしたんだろう。

少し、電話に出るのに戸惑ってしまう。


まるで家出中の中学生だ。


フゥ、と一息つき、私は電話に出た。


1人暮らしの私には久しぶりのお父さんの声だ。

『…おぅ、元気にやってるか?』

ぎこちないお父さんの声。


慣れない電話に緊張しているのだろう。

自然に笑みが溢れる。


「元気だよ。今仕事終わったの」

『…おぅ、そうか』

今わかったけど、“おぅ”がお父さんの口癖なんだと思う。


…沈黙。

「お父さん、何か用?」

『あ、おぅ。用があるんだ』


 
< 4 / 544 >

この作品をシェア

pagetop