永久の贄[BL]
半年後、今オレは里で一番大きな桜の木の下にいる。眠ったままの彩十を抱えて。

秋桜は見せてやれないが、同じ桜の仲間を見せてやりたくなったから。

この桜の木は他のどんな桜よりも大きく、満開の花はまるで光のように眩しい。

今は満開の一つ手前だが、それでも美しさは満開時に劣らない。


「本当に此処までよく眠るよな、お前も。少しはオレの気持ちも考えていい加減目を覚ましたらどうだ?」


しかし彩十は無反応。相変わらず気持ち良さそうにすやすやと眠る。

体重も半年前に比べたら随分軽くなったものだ。それだけ時間が経っているのだな。

桜の花弁が彩十の頭について、軽く払いのけてやれば、その花弁はまた遠くへ舞って行く。

彩十も目を覚ます事なくこの花弁のように遠くへ行ってしまうのだろうか。いや、そんな事はさせない。


「寿命で死ぬ以外、許さないからな。……愛し貫いてやるよ」


そう誓うように口付けをした。彩十からの反応は期待しない。
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