罪血
――――――――――――ドサ…
事切れたウェンディーズを見てから灑梛は肩越しに瑞希を振り返り、尋ねた。
『おぃ、瑞希。まだ殺るか?』
「いや、いい。意識が無いと面白くないだろ?」
『それもそうだな』
灑梛は頷き、菊を取り出し、ばらまく。
最後に赤い勾玉を落とし、
「任務完了、だな」
『あぁ』
それから、しばらくの沈黙。
『なぁ…』
「ん?」
『遺体処理、どうすんだ?』
「あ…!」
そう、問題はそこだ。
普段は放置するのだが、何せここは学校。しかも、人の死など見たことのない少年少女の集まりだ。
『ハァ…致し方ない』
灑梛は無線機を取り出し、スイッチを押した。
《はい、こちら、東京都靈羅隊》
『第三席、靈羅 灑梛だ。父上はいるか?』
《はい。少々お待ちください》
そこでいったん会話が途切れ、遠くで《高麗様ー》と聴こえたと思ったら、通話の相手は高麗になっていた。
《やー、なんだい、灑梛ちゃん。あ、久し振り》
『お久し振りです。ウェンディーズの遺体はどうすればいいですか』
相変わらず淡々と話す灑梛に、現状が掴めない高麗は聞き返した。
《ん?ウェンディーズの遺体?》
『はい。任務完了しました』
《おー、意外に早く終わったね。ありがとう》
『いや、任務なので。…遺体』
《ほっとけば?》
灑梛がスゥ…と細くなる。そして、体育館の入り口を見てから口を開いた。
『いいですか、父上。ここにはまだ世間を知らない人がたくさんいます。人の死など見たことのない少年少女達がうじゃうじゃ。先生も血塗れの死体なんか見たこと無いはずです。そんな中、死体を晒し、世間を騒がせたらどう責任を取るおつもりですか?国立ですよ、全国のお嬢様やご子息様が通っているんです。機密ではなくなり、颯峰総理にも迷惑が掛かります。ちなみに死体の姿は、左腕切断、右腕からかなりの出血、全身に刀傷があり、首に深い刺し傷。さぁ、どう処理をしますか?』
息を継ぐ暇も無いほど早口で捲し立てる灑梛に、高麗は狼狽えた。
《え…え?そんなに酷く殺ったの?まぁいーや。じゃ、処理班向かわせるから、体育館の中には人は絶対入れないで。よろしくね》
そこで会話は一方的に切られた。颯峰総理が余程効いたらしい。