罪血

「親父さん、何だって?」
『処理班向かわせるって。ったく、最初からそうすれば良かったものを…』

灑梛と瑞希が他愛もない話しをしていると、外からエンジン音が聴こえ、入り口を見るとゆっくりと鉄製の扉が開いた。

「失礼します。東京都靈羅隊死体処理班の澤村です」
「よォ、お疲れさん」
『死体は、あれな』

灑梛が指差す先には菊に埋もれたウェンディーズの姿があった。

澤村と名乗る男は、ブルーシートを抱えた数人の班員と共に死体をシートでくるみ、外に運び出した。残った班員は飛び散った血を拭いたり、抉れた床や壁の修復に取り掛かっていた。

「なんか、見てて申し訳なくなる…」
『そうだな』
「俺達がやったのに、嫌な顔一つせずに処理してくれるんだぜ?」
『それがコイツらの仕事だからな』

すると、外の人々を掻き分けて、一人の女性が入って来た。

「灑梛!瑞希くん!!」
『母上』
「お袋さん」

入って来たのは、東京都靈羅隊救護班長であり、灑梛の母親の緋梛だった。

「まぁ、酷い怪我…」

緋梛は灑梛と瑞希の怪我の度合いを見て絶句した。

『母上、怪我人は?』
「あ…えぇ、皆治療したわ。フルートの少女は病院に送ったけど」

忙しく動き回る処理班を尻目に、お互いの情報交換をした。

「今は器具が無いから無理だけれど…隊舎に戻ったら手当てしましょうね」

ふふふと笑う緋梛に苦笑いを返し、灑梛と瑞希は、隊舎に戻ってからの激痛を想像して顔を見合わせた。


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