宿題するから利用して

華美に着飾るタイプは自信満々に接してくるから苦手だ。

入学当初の自分になら、見向きもしなかった癖に、

美容師になりたい親戚に練習させてくれと言われ、お任せしたことで所謂デビューを遂げたことになり、

俺を取り巻く世界が変わった。


まことに幼稚な話なのだが、校則に引っ掛からない程度の茶色をした髪と、眉を弄られただけで、

勝手にイケメンと呼ばれるようになった。


「つっつん遊ぼ、奢るから」

束感ある黒々しい付けまつ毛を瞼に貼っている名もなき彼女は、

目立つ身分にも関わらず、元・地味な肩書のある人間を遊びに誘ってくる。


けれども、そう簡単に性格まで明るくなることは不可能なので、

「えっと、……塾、あるから」と、俺は緊張した反応しかできないのだが。

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