五里霧中



逃げ出そうとしたけど、思い出したんだ。


アタシは何からも逃げられない。


どこからも逃げられないんだ、って。


そう思うと足がすくんで動けなかった。


怖くて、怖くて、だけど声には出せなくて。


赤ん坊のように泣き叫ぶしかできなかった。



腕を掴まれて、お母さんがいつもいた奥の部屋に引っ張りこまれる。


アタシは無我夢中でおじさんの腕に噛みついた。


だけどやっぱり大人の力には勝てなくて、そこにあった大きなベッドに押し倒された。



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