五里霧中



「……もしかしたら、」


「ん?」


珍しく自分から口を開いたことに驚いたらしく、伯父さんと伯母さんがオレに視線を向ける。


「もしかしたら、その誘拐犯は虐待されている子供を助けたのか、も……」


そこまで言って、ハッとした。


伯父さんと伯母さんの顔が、見たことのないほどに歪められていたから。


「虐待なんて言うんじゃない!お前は毎日幸せに暮らせているだろう!」


「もう“あの子”のことは忘れなさい。あなたは助かったのよ?」



『あの子のことは忘れなさい。』


伯母さんの言葉が耳に突き刺さる。



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