五里霧中
「あんた、アタシの男と寝てるでしょ」
慌てた様子で帰って来たアイツが、開口一番言った言葉はそれだった。
何を今さら。
というより、その原因を作っているのはそっちだろう。
「……寝てるっていうか、あっちが勝手に「ふざけんなッ!!」
ついですぐに平手が飛んでくる。
私はそれをかわすことなく左の頬に受け、真っすぐにアイツを見上げた。
「何なのよ、何なのよ、何なのよ!なんでアタシがこんな糞餓鬼に……ッ」
口惜しそうに歯ぎしりを繰り返すアイツを静かに見つめる。
その視線に気付いたのか、アイツはもう一度私の頬を殴った。
あまりの強さに、思わずその場に転がる。
唇の端から血が出ていた。