五里霧中



「……もうやめて、お兄ちゃん」


「……君がそう言うなら……」


ぽとっと間抜けな音を立てて、その手から金属バットが落ちる。


「じゃあ、行こう。君たちは自由だよ」


男が私たちに手を差し出す。


これって誘拐って言うよりも……



「……そうやって、虐待にあってる子供たちを連れて帰ってるの?」


「え?あぁ、まぁそうだよ」


質問の内容が意外だったのか、彼は居心地が悪そうに鼻をかいた。



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