五里霧中


「よーし、じゃあ行こうか。……あ、そうだ。君らの名前はもう決まってるんだよ」


「……名前?」


「……名前なんて、」


二人で訝しげに顔を歪めると、男は甘いとでも言うように首を振った。


「名前を馬鹿にしちゃあいけないよ。名は体を表すって言うだろう?」


理由はそれだけじゃないのだろうけど。


もっともらしくそう語り、男の指が兄から順に私たちを示した。



「兄がカインで、妹がカイル」


「……カインって……普通相方はアベルでしょう?」


「それじゃあ弟が殺されちゃうよ。それに、カインなんて君に一番似つかわしい名前じゃないか」


兄は不機嫌そうにむすっと顔をしかめたが、気に入ったらしく、それほど嫌そうには見えなかった。


< 240 / 351 >

この作品をシェア

pagetop