五里霧中
「よーし、じゃあ行こうか。……あ、そうだ。君らの名前はもう決まってるんだよ」
「……名前?」
「……名前なんて、」
二人で訝しげに顔を歪めると、男は甘いとでも言うように首を振った。
「名前を馬鹿にしちゃあいけないよ。名は体を表すって言うだろう?」
理由はそれだけじゃないのだろうけど。
もっともらしくそう語り、男の指が兄から順に私たちを示した。
「兄がカインで、妹がカイル」
「……カインって……普通相方はアベルでしょう?」
「それじゃあ弟が殺されちゃうよ。それに、カインなんて君に一番似つかわしい名前じゃないか」
兄は不機嫌そうにむすっと顔をしかめたが、気に入ったらしく、それほど嫌そうには見えなかった。