五里霧中
今はまだ、このままでいい。
不意にそんなだらけた考えが脳裏をよぎる。
その通りなんだろう。
今の僕が他人を思いやったところで、それはその人の重しにしかならない。
自分自体が完成形でもないのに、赤の他人を変えられるできるはずがないじゃないか。
だから、今はまだこのままでいいんだ。
開け放った窓から心地よい風が吹き込んでくる。
小さな秋を感じさせる乾いた風は僕の前髪を揺らし、どこへともなく飛んでいった。