五里霧中


「10秒以内に決めて。

レイが大人になりたいなら、隠し持ってるナイフで私を殺して。

私と一緒に大人にならないなら、私に撃たれて死んで」


夏に近所の中華屋に行って、冷やし中華か冷やしつけ麺かどちらかを選ぶに等しい難問だ。


つまり保身してレイを殺すか、約束を守ってレイに殺されるかだろ?


うあー、君のよくそんなことを考えるね。


愛の力って恐ろしい。



でも、あの日僕は冷やし中華も冷やしつけ麺も選ばなかったんだ。


いつも通り、ラーメンを選んだから。


暑苦しい猛暑日でも食べたくなるほどに、そのラーメンは絶品だったんだよ。



< 321 / 351 >

この作品をシェア

pagetop