五里霧中
レイは諦めたように僕から離れ、少し寂しげに笑みを浮かべた。
「そっか。そっか、そっか。……こんなに時間が経っちゃったんだね」
その微笑みはどこか大人びていて、彼女の中身とそぐわない、なんてことを考えていた。
「でも、約束は約束でしょ。今まで私はずっとレイのために生きてきたんだから。レイもきちんと見せてよ」
レイなりの、約束を。
最後にそう呟き、レイは静かに一丁のリボルバーを取り出した。
「そんなものどこから持ってきたの?」
「身請け先の家にあったの。お父様の趣味がエアガンだったから」
苦痛を噛み殺し、『お父様』という名の主人を語るレイは、やっぱり大人だと思う。
まぁ、それを言った瞬間に僕の頭は脳味噌ばら撒きながら爆破されるだろうけど。