五里霧中



そうして歩いていると、不意に幼い頃聞いたお伽話を思い出した。


狼少年の話だ。



少年は毎日「狼が来た」と嘘をついては、村人を困らせていた。


だけど少年が嘘をつきすぎたために、村人たちは嘘に慣れてしまった。


それからは少年の言うことはすべて嘘。


どうせアイツは嘘つきだから、と信用されなくなった。


ところがある日、村に本当に狼が来てしまった。


驚いた少年は慌てて「狼がきた」と村人に知らせる。


でも村人たちは誰も少年の話を信じようとしない。


嘘をつきすぎた少年は、狼に食われて死んでしまった。



その話を聞いた時、幼い僕は思ったんだ。


『あ、自分に似ている』と。



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