五里霧中
柔らかい土を掘り起こしていると、逆に硬く無機質な気持ちが頭をもたげてくる。
原因はやはり東のあの言葉。
『その後は?どうやって生きていくんだ。まさか残された奴等を捨てて二人で逃げようってわけじゃねーよな』
脳裏に浮かんできた東の険しい表情を掻き消し、小さく息を吸い込む。
乾いた土の香りが喉の奥をくすぐった。
「―――でね……聞いてる?にぃに」
訝しむようなリンの瞳が僕を覗き込む。
ハッと我に返り、僕は何事もなかったかのように微笑んだ。
「聞いてるよ。で、何だっけ?」
「聞いてないじゃん。もー、にぃにはダメダメですなー」
「ごめんなさい」
不機嫌を露わにするリンを尻目に、僕は記憶の扉に静かに鍵をした。