月夜に舞う桜華
こんなつまらない喧嘩は初めてだ。
こいつとの喧嘩楽しいかもって思ったのに。
パッと彰真を離すとあたしは制服についた汚れを払った。
そして、地面に這いつくばって動かない彰真を一瞥すると屋上のドアに向かう。
「待て、よ………」
掠れた声が呼び止める。
「………」
肩越しに振り返ればよろめきながら立ち上がる彰真。
血の混ざった唾を吐いてニヤリと笑った。
「まだまだ元気なんだけど」
「…………」
「確かにペラペラ喋ってたかもな」
グルグル腕を回しながら、彰真は体を動かす。
「俺さ、何時も総長に言われるんだよな。」
喧嘩中に喋るのやめろって。
「でもよ、癖だから仕方ないよな」
クスリと笑う彰真に、あたしは眉を寄せた。