月夜に舞う桜華



「お前、」

「傘下含めて全員集めろ」


低い声に雷心の背中に冷たい何かが滑り落ちていく。


「さ、傘下も、か?」

「あぁ」


和は、先程の狂いようとはうってかわって、ゆらりと立ち上がるとニヤリと笑う。


「………そこまで、しなきゃならないのか……?」


雷心は、分からなかった。
桜姫という人間について詳しくは調べきれていないが、前皇蘭総長と女ということしか知らない。
総長だったことを除いても女だ。
女に傘下集結させる必要はあるのかと疑う。


「ついでに雅龍も潰す」

「………」

「桜姫………今度こそ、消えてもらう…」


和の声に含まれている感情は、憎しみと殺意で溢れているが、それとは違うように雷心には思えた。



それはまるで、執着にも似たようなものであった。



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