月夜に舞う桜華



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出来るなら会いたくない。
そう思っているときほど、その相手に会ってしまうのだと、あたしは身を持って知った。





「今日は、溜まり場来い」


いつもの屋上。いつの間にかあたしは毎日屋上に来るようになってしまった。本当は図書室に行ってのんびり惰眠を貪りたいのだけれど、図書室の前には必ず朔夜が陣取っていて拉致られてしまうのだ。
そんなことが毎日続けば、さすがのあたしでも白旗を振る。


「なんで?」


屋上扉の壁に寄り、昼食を食べてながらあたしは視線だけを朔夜に向ける。


「今日は会議だからな」

「なら、あたしは帰る」

「駄目だ」

「何故、」

「一人で帰らせたら、またあっちに帰るだろ」


ギロリと睨まれ、あたしは首をすぼめる。朔夜の言葉は図星だった。


「………あそこはあたしの家だし」


家に帰るのは当たり前でしょと朔夜から顔を背けながら小さく答える。


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