月夜に舞う桜華



すると、すっと朔夜の手が伸びてきて、顎を掴まれ無理矢理朔夜の方に向かされる。


「ただ、寝に帰ってるだけだろ」

「そうだけど」

「だったら俺の家でもいいだろ」


グッと距離が縮まって、唇が触れるか触れないかの距離で話すあたし達。
ジッと鋭い目で見つめられると、否、と答えることが出来なくなるのは何故だろう。


「―――――おいおいおい」


にゅっと横から腕が伸びてきてあたし達を無理矢理引き剥がす。
目だけで確認すると、青筋を立てた司が怒気を立ち上らせながら見下ろしている。


「司」

「距離が近すぎんだよ」


ギロリと司は朔夜を睨むが、朔夜はどこ吹く風だ。仮にも雅龍総長が司ぐらいの睨みなんてびくともしない。


「あ?」

「椿が迷惑してんだよ」


司は、あたしの腕を掴むと朔夜から遠ざけた。


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