月夜に舞う桜華
「冬滋、晴麻来てたか」
「早くついた」
「総長からの直々だし」
声から伝わる、朔夜を尊敬している。
二人はチラッとあたしを見ると、目を細めた。
それに気付いた朔夜はあたしの腰に手を回して引き寄せた。
「椿だ」
「皇蘭の?」
「元、な」
ふーん、と冬滋はあたしを品定めするかのように頭の上から爪先までを舐めるように見る。
「冬滋」
「信用、出来るのか?」
疑いの目。
うん、間違っていない。
「………信用なんかしなくていい」
「………」
隣で朔夜が小さく溜め息をつく。
なに、と眼力に込めながら見上げると、朔夜は何も言わず部屋の奥に置いてあるソファーに腰掛ける。
「………ちょっと」
「ん?」
「普通に座らせて」
少し下にある朔夜の顔を見下ろしながら睨む。
朔夜の隣に座ろうと思ったのに、いつの間にかあたしは朔夜の足を跨いで座らされている。