月夜に舞う桜華



「あ、桜姫!!」

「?」


呼び止められて肩越しに振り返れば、先程宣言していた男が駆けてくる。


「あの、ちょっといっすか?」

「なに?」

「俺、桜姫のすっごいファンだったんですよ」


ファン………?


思わずきょとんとしてしまう。
先に行っていた司達がどうした?と戻ってくる。


「あーそいつ」

「?」

「桜姫心酔者」

「司さん!!」


頬を赤く染めながら彼はグッと拳を握りながら恐る恐る口を開いた。


「お願いがあるんですけど」

「?」

「倉庫まで送らせてくれませんか?」


彼なりにかなりの勇気を出して言ったのだろう。耳まで真っ赤になっている。
でも、とあたしは心の中で倉庫とはバイクで行くほどの距離はない。


< 183 / 310 >

この作品をシェア

pagetop